Amazonに並ぶと同時に予約注文して、到着を待ちわびていた、岡田裕子『難しい依頼者と出会った法律家へ ―パーソナリティ障害の理解と支援―』が届いたので、一気読みしてしまいました。
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法テラス常勤弁護士の研修の中に、希望・選抜制のパーソナリティ障害対応研修というものがあります。
学者・医師・臨床心理士の先生方の講義や、臨床心理士の先生方が扮するパーソナリティ障害のあるお客さんを相手にした模擬法律相談といった、大変手厚い研修です。
ぼくは、この研修が始まった年に受講させてもらいました。
そのときの講師の先生のお一人が、岡田裕子先生だったのです。とても優しいお話しやすい感じの先生でした。
当時、ぼくが前任者から引継いだものの言動のあまりの過激さに接し方を悩んでいた相談者さんがいました。盛んにこちらをこき下ろしてして、弁護士なんかに頼まなくても構わないんだと言ってくるのに、本当に相談を打ち切ろうとすると抵抗して、実際は困っているようでもあり、明らかに頼ってきている。
研修のあと、「もしかすると、研修で勉強したような特徴の方なのかも?」と思って対応したところ、たまたま大変うまくいき、最終的に仲良くなれました。
こちらの理解がすすんだので、お客さんの感じ方や辛さに応じた対応がようやくできるようになったのかもしれません。
何も知らなければ、理解困難な言動に困惑して振り回されて、腹も立ってしまいますが、世の中にはそういう精神状態になる方がいて、だからそういう言動になることがある、目の前の人がそういう状況なのかもしれない、ということがわかっていれば、慌てることなく、もう少しは上手く助力ができます。
研修のテキストだった、岡田尊司 『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか
』の、特に各パーソナリティ障害ごとの「接し方のコツ」もとても役に立ったので、紙の本は手垢だらけになり、後に出た電子版はタブレットにも携帯電話にも入れてあって、文字どおり座右の書になっています。
そんな研修の先生の、ズバリ研修の内容のような本が出たので、ぼくにとっての待望の書となったのでした。
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『難しい依頼者と出会った法律家へ ―パーソナリティ障害の理解と支援―』も、『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか 』も、最初は論旨が分かりづらく感じるかもしれません。
他人の人格を扱うので、偏見を助長しないようにと、文章に留保が多いからです。
特に総論にその傾向が強いので、分かりづらいと感じたら、まずは第II部の具体例に進んでしまうのも手ではないかと思います。きっと、一度は出会ったことがある傾向のタイプの解説が読めると思います。そして、見立て方や法律相談の中での具体対応の説明がメインなので、すぐに役立てると思います。
パーソナリティ障害以外に、統合失調症、認知症、ADHD、うつ状態、発達障害、自閉症スペクトラム障害の対応についても触れられています。
※P97 6行目の「犯行を抑圧」は「反抗を抑圧」だと思います。