青森市の「高齢者の尊厳ある暮らしを考える会」で、研修の講師をしてきました。
青森市の法テラス青森にも常勤弁護士はいるのですが、色々あって、八戸に異動したぼくにご依頼がありました。事件処理以外のご依頼もなるべくお受けしていきたいところ、法テラスの青森地方事務所は、こういったご依頼への対応も快くGOサインをくれるのでした。
「判例から学ぶ権利擁護」というお題を頂いていましたが、福祉職の方向けの50分間の講義だったため、今日は民事裁判を解説することにし、
(1)事件や事故がおこっても、報道されたり訴え提起に至ったりするのはそのうちの一部であること
(2)訴えが提起されても判決に至るのはさらにその一部であること
(3)判決に至ってもそのうち刊行されるのはさらにその一部に過ぎないこと
を説明した上で、
佐藤丈宜「介護事故による損害賠償請求訴訟の裁判例概観 ―過失・安全配慮義務違反の判断を中心として」(判例タイムズ1423号)をネタに、
(4)紹介されているうち半分強の判決で請求が(一部)認容されていること
(5)認容額が決して低額ではないこと(数百万円~数千万円)
を説明して、最後に、実際の判決を読んで、裁判所がどのような判断を刷るのかをみてみる、ということをしました。
サンプルで読む判決は、賠償責任を認めたものを選びました。
それは、そうでないと損害論の説明ができないというのと、責任を認めた判決を読んだ方が、賠償責任を負わないように気をつけようと思っていただけるのかな、と思ったからでした。
そうしたところ、研修後に、怖くなった、責任が否定されたケースも勉強したかった、というような感想を頂いたので、もし次回があれば、「その2 責任否定例編」でもやってみたいと思います。
また、一つの事故が起こってしまった際に、複数の責任の問題が生じうるということが分かりづらかったようでしたので(施設運営者の責任と、ミスをした職員の責任、民事・刑事・行政上の責任・・・)、次回への反省としたいと思います。